東京キネマ倶楽部(2000年12月〜2001年7月)

 2000年12月、弁士付きで無声映画を観ながら食事ができるレストランシアターとしてオープンした「東京キネマ倶楽部」。私の活弁のスタートはここである。
 かつて大規模なキャバレーだった3層吹き抜けの空間を転用、ステージもホールも広く、キャバレー時代そのままの内装やテーブル、いすなどが独特のレトロな雰囲気を漂わせていた。
 新人弁士オーディションをマネージャーにもナイショで受け、受かってからも最初は四苦八苦。今思えば情けないステージの連続だったが、ここで私はチャップリン作品から短編アニメ、エイゼンシュテインの大作『戦艦ポチョムキン』まで、約30作品を担当させてもらった。
 邦画、洋画、バラエティに富んだ作品がラインナップされ、一つの作品を2〜3人の弁士が日替わりで担当。常設の無声映画館としても、初の試みだったし、唯一の存在だったから、文化発信の上でも注目すべき企画だった(実際随分マスコミに取り上げられた)。
 鶯谷という立地はもともとだから仕方ないにしても、食事、接客、弁士のパフォーマンス、告知…様々な課題を克服する前に終わってしまったのはもったいなかったと思う。様々なテイストの弁士がいて、弁士によって全然作品の印象が違うということもいつでも体験できたし(皆まだまだ発展途上だったが)、今作ろうと思ってもなかなか作れない一昔前のゴージャスな雰囲気と無声映画はとてもマッチしていたし、もっともっと、大人の娯楽の場としても活躍できるスポットだった。
  「ずっとここでホールの仕事やっていきたいです」と言っていた映画好きの若いアルバイトスタッフの男の子、チャップリンの短編集のビデオテープをくれたスタッフの事などを今でも時々思い出す。私自身がここで様々なことを学ばせてもらったのは確かである。


上演作品:
チャップリンの『勇敢/キッド/街の灯/黄金狂時代/霊泉/冒険』 キ−トンの『探偵学入門/荒武者キートン/大学生』 ロイドの『浮気者/豪勇ロイド』 チビッコギャング/爆進ラリー/ラリーの美容師/ラリーのスピーディ/キルトとズボン 散り行く花/ノートルダムのせむし男/眠るパリ/メトロポリス/カリガリ博士/戦艦ポチョムキン/パッション/結婚哲学
逆流/瀧の白糸/東京行進曲/波浮の港 アニメ『桃太郎/日の丸太郎/のらくろ』




 
 
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